なんで取税人や遊女の方が先に神の国に入るのか

 それは、申し開きしようがないからでしょうね。あんた罪人でしょ、って言われたら、「はいそうです」って答えるしかない。あからさまな罪人だから罪の自覚までの距離が短い。だから悔い改めまでの距離も短い。
 誤解してはいけないのは、取税人が罪人としてよく登場するのは、彼らの職業そのものが悪いのではなく、一般的に、彼らが決められた以上の税を取っていたということに起因する。
 逆に遊女の方はその職業そのものがアウトになる。そこは性が関わっているだけに、普通の職業とは線が引かれる。しかしその線引きの理由は信仰がないと受け入れられない。いわゆるリベラルな見方をすれば、職業差別になる。でも一般人の意識においても、信仰に関係なく、「お水の人」=悪いことをしている人と考えられている。問いを立てるとすれば、なぜお水の人が差別されるのかよりもむしろ、水商売を悪いことだと考えることが差別だというマイノリティーの考えはどのようにして生まれてくるかの方が興味深い。