電脳コイル――最終話視聴前の小括
電脳コイルもまた、二人の(意図的に)対照的な属性の少女たちの物語だ。
物語は反復されている。反復は失敗した自己を望ましい形に書き換えるために行われる。ヤサコはかつて友達を見捨てた過去の自分を書き換えるため、イサコを助けに向かったのである(構造的には)。
イサコはなぜ孤独な存在でなくてはならなかったのか。それは孤独ではないヤサコの性質が顕在化させられるためであろう。その性質はもともとそこにあったものであり、それを顕在化させるのはトートロジカルな確認の振る舞いでしかないのだが、しかし、まさにその確認こそが、彼女が他でもありえた可能性へと道を開く、つまり、物語を発動させる契機を構成する。
ヤサコはかつての友に見放される。「わたしはひとりでなんとかしたわ。だからあなたもひとりでなんとかして」と。ヤサコの反復が成功するためにはただイサコに愛想を振り向けるだけでは不足だった。それは彼女の自己欺瞞を満たすふるまいでしかなかった。では、なにが欠けていたのか。それは彼女自身が孤独を経験することだったように思われる。なぜクライマックスのこのタイミングでデンスケが死んだのか。あからさまな移行対象であるデンスケはヤサコを現実の孤独から守る保護膜のようなものである。それが失われることで、いわば孤独を手に入れることに成功したヤサコはイサコを助けに向かうことができたのだろう。
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