電脳コイル――補足
さて、前回は「イサコは孤独な存在」と単純化してしまったが、二人の少女が互いに背反的な鏡像であり、共通の精神的基点を持っているからこそ二人の少女を対にして描くことができるのであり、それゆえイサコもまた、成熟を要請される存在であることを見逃してはならない。ヤサコはデンスケとの「お別れ」すなわち移行対象との関係からの離脱を達成するが、イサコはそれをまだ達成することができない、という状況があきらかとなる。そのことは物語の序盤から、彼女が「何か」に異様に執着しているという様子からすでに暗示されている。物語が最初から成長物語の古典的様相を呈している以上、成熟を要請されるべき主人公の片割れが物語序盤で執着するものが移行対象であることはほとんど必然であると言ってよい。
だから、ヤサコとイサコは互いが互いを引っ張りあげるようにして相互的に成熟する。
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