「なぜ人を殺してはいけないのか」についてのメモその2

 条件付きで殺人を認める立場と、全く殺人を認めない立場について、両者を非対称的に捉える記事を以前読んだ。それによれば、条件付きで殺人を認める立場は、自分たちとは違う殺人の条件を持つ他者からの攻撃を不当だと言うことが論理的にはできないのだという。その記事では明確にはかかれていなかったと思うが、全く殺人を認めない立場なら、不当だと言うことが可能だと考えているようだった。
 しかし、私にはそのようになる理由が今のところ理解できない。条件付きで殺人を認める立場も、全く殺人を認めない立場も、単に共有ルールの違いがあるだけで、条件付きで殺人を認める立場の間でルールが違うのと何も変わらないと考える。殺人を認める条件の根拠が不在であるゆえに条件の異なる立場からの攻撃に反論できないのだとすれば、同様に、殺人を全く認めない立場における根拠の不在ゆえに「殺人を認めない」というルールを共有しない相手からの攻撃に反論することはできない。条件付きで殺人を認める立場と、殺人を全く認めない立場との間に、非対称的な正当性の違いは存在しない。
 上記のことを踏まえたうえで、前のメモで述べたように、ルールを措定する世界観の水準においては(さらなるメタ視点が現われない地点では)、異なる立場を退けることができる。